旅行で飛行機に乗ると、スマホも機内モードなもんで手持ち無沙汰が極まります。
じゃぁkindleで薄めの本でも読むかと、搭乗前にダウンロードしておいたのですが、これが大正解でした。
NHK出版より、手軽にちょっとだけ教養を身に付けたい、という大人にぴったりのシリーズです。
私がこの本をおすすめしたい人
- 30代~50代で「この先どうしていこうかな」と思案中
- 若いころに自分が想像していた大人像、先輩像と今の自分はなんか違う
- 「天職」「天命」「本当にやりたいこと」みたいな言葉を聞くとちょっと心がざわつく
『古典』が言いたかったこと
この本の著者は能楽の俳優として「原典を理解する」という立場から古典に親しんでいます。
そこで著者は、論語に対して
「孔子が生きていた時代に使われていた漢字」と、「その後に口伝を文書化して『論語』が出来た時代に使われた漢字」は意味が違う
と気づき、文学的ダヴィンチ・コード(大げさか?)から物語が始まります。
この辺の古典謎解きは本書を読んで体験してもらうとして、本書を読んで一番気持ちいい読書体験は、
相手(古典文学)の言いたいことに「なるほど!」と相槌をうつ会話感
だと思います。
膝を突き合わせて、『仕事』について深く話し合う時間
この『役に立つ古典』を読んで得られる時間をたとえると
「すごく尊敬している気さくな職場の先輩に、『中年が仕事して生きるってどういうことっスか?』と居酒屋で絡んだら、親身になって答えてもらった夜」
みたいな感じです。
やっぱり、居酒屋で膝を突き合わせて正面切ってウザ絡みするとき、テンポはゆっくり目がいいですよね。ちゃんとこちらの言いたいことも聞いて欲しいし、親身になって答えてくれる先輩の声のトーンもゆっくりで、ちょっと低めがいい。
そうであれば、この知的体験は「読書」でしか得られません。
動画だと早すぎるし、自分のペースで質問できないし、なんとなく見逃しちゃう。キンキン声で早口では、「なんか良いこと言ってるっぽいけど受け入れずらい」となる。
kindleでも紙でもいいですが、目で文字を追ってめくるという行為が「会話感」のテンポにちょうどいいのだと思います。
書いてある言葉で気になったところを頭の端に置いて読み進める、それについて自分の考えも少し心に残しておく。
この感じが、私が言う「膝を突き合わせてウザ絡み」のペースです。
さらに本書はしっかりと「親身な先輩」で居てくれるので、なおさら言うことなし。
「なんか、色々聞いてもらって良い夜だったなぁ」
となるわけです。
本を読んでいるのはこちらだから知識を「聞いている」はずなのに、「聞いてもらった感」があるのがこの本の妙ですね。
kindleで500円程度なので、心のお供にぜひ。
大人になってできる「良い先輩」って、本当に貴重です。
それがたとえ、はるか昔に古典を書いた、もうこの世に居ない人であっても。